ユーロ・ポンド・円の強弱を見比べる場面

ドル円停滞の裏で動くユーロ・ポンド、PMIとBOEが示す今週の視点

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ドル円が止まった週にこそ、見る通貨を増やす

ここ数週間、この連載はドル円の移動平均ばかり追いかけてきた。日銀とFOMCが立て続けにあった影響もあって仕方ない面はあるが、正直なところ同じ通貨ペアの整列を毎回確認する作業には少し飽きが来ていた。そんな折、9月25日の夜、ドル円が157円台前半まで下げたというニュースを見て、高市首相が、行き過ぎた円安は好ましくないという趣旨の発言をし、片山財務相も為替介入への意識と日米の協調姿勢を示したことが円買い戻しのきっかけになったと知った。ただ、この動き自体は目新しいものではない。むしろ気になったのは、同じ週にユーロ圏と英国でまったく方向の違う経済指標が出ていたことだ。ドル円だけを見ていたら、この温度差には気づけなかった。

ユーロ圏PMIが3年半ぶりの高水準に

9月23日に公表されたユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)速報値では、総合PMIが8月の52.0から53.1へ上昇し、3年以上ぶりの高い水準になった。サービス業PMIも51.6から53.0まで伸び、製造業PMIは52.7で前月から横ばいだった。50を超える数値は拡大を示すので、この結果はユーロ圏の民間部門が想定より強く動いていたことを意味する。数字を見た瞬間、正直驚いた。今年はずっとユーロ圏の景気減速が話題になっていたはずなのに、ここへ来て逆方向のサプライズが出たからだ。

この強さは、ユーロ圏の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)の判断にも直結する。9月26日付の外為どっとコムの週間為替展望によれば、ECBの次の利上げが10月になるか12月になるかが市場の焦点で、10月利上げの織り込みは足元でおよそ50%だという。PMIの強さがこのまま続けば、利上げ観測はさらに前倒しされてもおかしくない。

英国はPMI鈍化とBOEの据え置き、財政も重荷に

9月23日発表のS&Pグローバルによるフラッシュ速報では、英国の総合PMIは8月の52.5から51.7へ低下した。景気が拡大局面にあること自体は変わらないが、勢いは明らかに落ちている。

金融政策の側でも板挟みの様子がうかがえる。9月17日に公表されたイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)の議事要旨では、政策金利を3.75%に据え置く決定が6対3の投票で可決されていた。3人の委員は0.25%の追加利上げを主張していたという。委員会自身も、CPIが2026年10-12月期に3.75%程度、2027年1-3月期には4%をわずかに超える水準まで上昇するとの見通しを示し、インフレ見通しへのリスクは上方に傾いており、7月の金融政策報告時点よりもその傾きは強まっていると踏み込んで書いている。次回会合は11月5日の予定だ。

景気は鈍り、物価は上振れリスクを抱える。これだけでも判断が難しいのに、前述の外為どっとコムの記事は、英国の8月の公的部門借入額が183億ポンドとなり、予想の155億ポンドを上回ったことにも触れていた。財政の悪化がポンド売りの材料になり得るという指摘には納得した。利上げをしたいのに、景気と財政の両方が足を引っ張る。BOEの立場を想像すると、素直に同情したくなる。

ドル円・ユーロ円・ポンド円を動かす材料の違いを比較する図
ドル円は方向感が定まらず、ユーロ円とポンド円はそれぞれ異なる材料で下向きに動いている。

円クロスの移動平均が語ること

ここまでの材料だけなら、ユーロが買われ、ポンドが売られるという単純な構図に見える。ところが円との組み合わせで見ると、話はそう単純ではなかった。ドル円、ユーロ円、ポンド円それぞれの日足を確認し、20日・50日・100日の単純移動平均線(終値ベース)を並べてみたところ、意外な結果が出た。

ユーロ円は20MAが180.444、50MAが182.978、100MAが184.045で、20MA<50MA<100MAの順に並び、100MAは5本前の184.245から184.045へ下げていた。つまり下向きに整列している。ポンド円も20MAが210.225、50MAが213.605、100MAが214.219で同じく下向きに揃い、100MAは5本前の214.388から214.219まで下げていた。ユーロもポンドも、目先のファンダメンタルズは対ドルで強含みやすい材料が出ていたにもかかわらず、対円のチャートは4月からの下降基調をまだ引きずっている。

対してドル円は20MAが156.431、50MAが158.632、100MAが159.593で並び自体は下向きの形をしているが、100MAは5本前の159.552から159.593へわずかに上向いており、揃っていると言い切れない状態だった。政治要人の発言で円が買い戻されたことが、この中途半端な形に表れているのかもしれない。

値動きの荒さにも差があった。過去4カ月ほどの日足を確認すると、1日あたりの値幅の平均はユーロ円が約1.052円、ポンド円が約1.335円で、ポンド円の方が振れやすい。ユーロ圏の材料が良くても、円全体に対する下押し圧力の方が強く出ているように見えるのが今の円クロスの姿だ。

上に行く条件、下に行く条件

ここからは仮の話として読んでほしい。ユーロ円がもし180円台の20日移動平均線を上に抜けてくるなら、ECBの利上げ観測の強まりが円売り圧力に勝ち始めたサインとして注目したい。逆に、日本側の口先介入的な発言が続いたり、リスク回避の流れが強まったりすれば、今回確認した安値圏である177.730円あたりまで押し戻される展開も考えられる。

EUR/JPYの1day足ローソク足チャート。期間は2026-04-06 09:00 〜 2026-09-25 09:00(日本時間)。20MA・50MA・100MAを重ねて相場環境を示している。取引時間外の24区間は詰めて描き、破線で位置を示している。チャートはTradingView Lightweight Chartsで生成。
EUR/JPY 1dayの相場環境。ローソク足に20MA・50MA・100MAを重ね、現在の流れを確認するチャート。価格はtwelvedata。Chart by TradingView Lightweight Charts — https://www.tradingview.com/

ポンド円については、11月5日のBOE会合に向けて財政懸念が和らぐか、英経済指標に底打ちの兆しが出れば、210円台前半の20日移動平均線を試す反発があってもおかしくない。一方、公的部門借入の悪化が続いたり、BOEが景気減速を理由に様子見姿勢を強めたりすれば、207.087円まで見えている安値ゾーンへの接近を警戒したい水準だと感じる。どちらの通貨も、方向を決めるカギは来週以降の材料次第という点は共通している。

GBP/JPYの1day足ローソク足チャート。期間は2026-04-06 09:00 〜 2026-09-25 09:00(日本時間)。20MA・50MA・100MAを重ねて相場環境を示している。取引時間外の24区間は詰めて描き、破線で位置を示している。チャートはTradingView Lightweight Chartsで生成。
GBP/JPY 1dayの相場環境。ローソク足に20MA・50MA・100MAを重ね、現在の流れを確認するチャート。価格はtwelvedata。Chart by TradingView Lightweight Charts — https://www.tradingview.com/

来週のカレンダーとボラティリティへの備え

来週は指標ラッシュだ。月曜には日本の企業向けサービス価格指数、火曜にはRBA(オーストラリア準備銀行)の政策金利発表と米消費者信頼感指数、水曜には豪CPIと米PCE物価指数、米GDP改定値が控える。木曜は日銀短観と米ISM製造業景況指数、そして週末にかけては米雇用統計とユーロ圏CPI速報値が待っている。

曜日指標
月曜日本 企業向けサービス価格指数
火曜豪州 政策金利/米 消費者信頼感指数
水曜豪州 CPI/米 PCE物価指数・GDP改定値
木曜日銀短観/米 ISM製造業景況指数
金曜米 雇用統計/ユーロ圏 CPI速報値

これだけの材料が重なると、ユーロ円で1.052円、ポンド円で1.335円という普段の値幅の平均を上回る動きが出ても不思議はない。ロットを普段通りに固定したままだと、想定より大きな含み損を抱えるリスクがある。エントリー前に証拠金がどれだけ必要になるか、値幅が広がったときの損失額がどの程度になるかを、事前に計算しておく習慣をつけておきたい。

複数通貨を追う環境をXMで整える

ドル円一辺倒だった視点を広げると、必然的に確認する通貨ペアの数も増える。ユーロ円、ポンド円、ドル円を同時に見比べるなら、複数チャートを並べて表示できる取引プラットフォームがあった方がやりやすい。MT4・MT5であれば、時間足ごとにチャートを並べて移動平均線を重ねて見比べる作業も一つの画面で完結する。

今回のように、ファンダメンタルズの強弱とチャートの形が一致しない通貨ペアも出てくる。値動きの荒さが増える週こそ、自分のポジションサイズと損失許容額を先に確認しておく地味な作業が効いてくると、あらためて感じた一週間だった。