通貨ごとにポジションの偏りを点検する場面

ドル円とユーロ円を同時に買うと円リスクは2倍に?通貨ごとに数えるポジション偏りの点検法

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ドル円とユーロ円を両方買うと、分散ではなく円売りが重なる

土曜の朝、市場が閉まっているあいだにチャートを並べて保有を点検していて、自分でもうっかりしやすいと感じた点がある。ドル円とユーロ円を1本ずつ買うと、画面上は通貨ペアが2つに増える。ところが中身を通貨に分けると、どちらも「円を売っている」。分散したつもりでも、実際には同じ円のリスクを2回重ねて持っていることになる。

先に結論を書くと、ポジションは通貨ペアごとではなく通貨ごとの合計で数えたほうがいい。相関の高い組み合わせは1つのポジションとみなし、ロットと損切り幅を合算して許容損失の範囲に収める。ここでは先週の実際の値動きを使って、その数え方と週末の点検手順を整理する。

通貨ペアの相関は「どれだけ同じ向きに動くか」

相関とは、2つの通貨ペアがどのくらい同じ向きに動くかを表す関係のこと。同じ向きに動きやすければ正の相関、逆向きに動きやすければ負の相関と呼ぶ。ドル円とユーロ円はどちらも右側(決済通貨)が円なので、円がまとめて買われる日や売られる日には一緒に動きやすい。正の相関の典型的な例だ。

ドル円とユーロドルでは、ドルの位置が逆になる。ドル円ではドルが左側、ユーロドルでは右側にあるので、ドルが買われるとドル円は上がり、ユーロドルは下がる。こちらは負の相関になりやすい組み合わせだ。ここで「ドル円買い」と「ユーロドル売り」を同時に持つと、注文の向きは逆でも、両方ともドルを買っていることになる。逆向きの注文だからバランスが取れている、と思い込むのがいちばん危ない。

先週のクロス円で見た、同じ円でも動きが揃わない場面

とはいえ、相関がいつも一定とは限らない。みんかぶが10月16日20時15分に配信したロンドン為替概況によると、この日はウォーシュFRB議長も植田日銀総裁(内田副総裁が代読)も次の利上げ時期に踏み込まず、ドル売りと円売りが同時に進んだ。ユーロ円は上昇した一方、ドル円は158円ちょうどを挟んだ小幅な上下動にとどまったと報じられている。

私が取得した日足(UTC基準の日付)でも、同じ形を確認できた。10月16日の日足で、ユーロ円は始値177.312から終値177.577まで上げ、上げ幅は26.5pipsだった。ドル円は始値158.105から終値158.000まで下げ、下げ幅は10.5pipsだった。同じ10月16日の日足で、ユーロドルは始値1.12147から終値1.12390へ24.3pips上げている。ユーロ円はおおまかに言えば、ユーロドルとドル円を掛け合わせた値になる。円が売られても、同時にドルも売られればドル円はあまり動かず、ユーロ円だけが上がる。この分解を頭に入れておくと、クロス円の動きが読みやすくなる。

週全体で見ると、差はもっとはっきりしている。10月12日の日足始値から10月16日の日足終値までで比べると、ドル円は始値158.299から終値158.000まで下げ、ユーロ円は始値177.215から終値177.577まで上げた。同じ「円の通貨ペア」が1週間で逆向きに動いたのは、正直少し意外だった。ただ、相関が弱かったから安心だとは思わなかった。円そのものが大きく動く材料が出れば、2本がそろって同じ向きに動く余地は残っているからだ。

10月14日の日足は、2本とも損失側に動いた日の例になる。ユーロ円は始値177.336から終値176.617へ71.9pips下げ、ドル円は始値158.361から終値158.312へ4.9pips下げた。1万通貨のクロス円は1pipで100円動く。仮に両方を1万通貨ずつ始値で買って終値まで持っていたとすると、評価損はユーロ円で7,190円、ドル円で490円、合わせて7,680円という計算になる。片方の動きが小さい日でも損失は足し算になる。

日足の移動平均線(一定期間の終値の平均をつないだ線)を見ても、2つのペアの形は違う。ユーロ円の日足は20MAが178.216、50MAが180.921、100MAが182.921と下から順に並び、100MAも5本前の183.334より低い。下向きに揃った状態だ。ドル円の日足は20MAが157.956、50MAが157.756と20MAが上にあるものの、100MAは159.479で上に残っていて、並びは揃っていない。同じクロス円でも、日足の流れは別々に確認したほうがいい。

EUR/JPYの1day足ローソク足チャート。期間は2026-05-01 09:00 〜 2026-10-16 09:00(日本時間)。20MA・50MA・100MAを重ねて相場環境を示している。取引時間外の24区間は詰めて描き、破線で位置を示している。チャートはTradingView Lightweight Chartsで生成。
EUR/JPY 1dayの相場環境。ローソク足に20MA・50MA・100MAを重ね、現在の流れを確認するチャート。価格はtwelvedata。Chart by TradingView Lightweight Charts — https://www.tradingview.com/
USD/JPYの1day足ローソク足チャート。期間は2026-05-01 09:00 〜 2026-10-16 09:00(日本時間)。20MA・50MA・100MAを重ねて相場環境を示している。取引時間外の24区間は詰めて描き、破線で位置を示している。チャートはTradingView Lightweight Chartsで生成。
USD/JPY 1dayの相場環境。ローソク足に20MA・50MA・100MAを重ね、現在の流れを確認するチャート。価格はtwelvedata。Chart by TradingView Lightweight Charts — https://www.tradingview.com/

通貨ごとの合計エクスポージャーを数える

エクスポージャーとは、ある通貨をどれだけ買っているか、または売っているかの量を指す。数え方は単純で、通貨ペアを左右の通貨に分け、買っている通貨と売っている通貨に振り分けてから、通貨ごとに足し合わせればいい。

10月16日の日足終値で、ドル円1万通貨買いとユーロ円1万通貨買いを分解すると次のようになる。

通貨ペアと注文買っている通貨売っている円
ドル円 1万通貨 買いドル 1万通貨1,580,000円分(158.000で換算)
ユーロ円 1万通貨 買いユーロ 1万通貨1,775,770円分(177.577で換算)
合計ドル 1万通貨、ユーロ 1万通貨3,355,770円分

通貨ペアで数えると2本でも、円で見れば3,355,770円分の円売りを1つの塊として抱えている。円が買われる局面では、この塊がまとめて評価損になる。

組み合わせによっては打ち消し合うこともある。ドル円買いとユーロ円売りを1万通貨ずつ持つと、円の売りと買いの多くが相殺され、残るのは「ドル買い・ユーロ売り」に近い形になる。中身はユーロドル売りに近いポジションだ。自分では円の取引をしているつもりでも、実際にはユーロとドルの力関係に賭けていることがある。

相関を考えたロット配分と損切り幅の合算

相関の高い2本は、1本のポジションとして扱う。具体的には、損切りに掛かったときの想定損失を2本分足して、その合計が自分の許容損失に収まるかを確かめる。1万通貨のクロス円なら想定損失は「損切りまでのpips × 100円」で出せるので、2本の合計は(ドル円の損切り幅+ユーロ円の損切り幅)× 100円になる。

1本で建てるときの許容損失をそのまま2本ともに使っていると、実質的にはリスクを倍に増やしていることになる。ドル円とユーロ円の両方を持ちたいなら、それぞれのロットを減らすか、どちらか1本に絞る。私はこの合計額を先に出してから、どちらを残すかを考える順番にしている。

迷うのは、先週のように相関が弱まった週だ。ドル円とユーロ円が逆に動くなら合算しなくていいのでは、と考えたくなる。それでも私は合算するほうを選んだ。相関が崩れたのはドルやユーロの事情が強く出たためで、円そのものが動く材料が出れば、2本はまた同じ向きにそろいやすいと見ているからだ。

証拠金維持率から見た、偏ったポジションの危うさ

証拠金維持率は、有効証拠金(口座残高に評価損益を加えた額)を必要証拠金で割った割合だ。円売りが重なったポジションで円高が進むと、2本の評価損が同時に有効証拠金を削る。必要証拠金はほとんど変わらないので、維持率は1本だけ持っているときより速く下がる。

仮にレバレッジ35倍で計算すると、先ほどの円売り合計3,355,770円分に対する必要証拠金はおよそ95,879円になる。必要証拠金だけを見ると小さく感じるが、評価損は2本分の速さで増えていく。証拠金に余裕があるように見えても、その中身が1つの円リスクに集中していないかを先に確かめておきたい。必要証拠金は、注文の前に計算ツールで出しておくと数え間違いを減らせる。

休場中の週末に保有ポジションを点検する手順

市場が閉まっている週末は、値動きに気を取られずに保有を見直せる。私が使っている順番は次のとおり。

  1. 保有中の通貨ペア、売買方向、ロットをすべて書き出す。
  2. 各ポジションを左右の通貨に分け、買っている通貨と売っている通貨に振り分ける。
  3. 同じ通貨の量を合計し、円やドルに偏りがないかを見る。
  4. 同じ通貨に偏った組み合わせは1つとみなし、損切り幅を合算した想定損失を許容損失と比べる。
  5. 来週の予定を確認し、偏っている通貨に効く発表がないかを調べる。
保有ポジションを通貨ごとに分けて合計し、偏りを損切り幅の合算で許容損失と比べる週末点検の順序
通貨ペアを通貨ごとに分け、同じ通貨に偏った組み合わせは損切り幅を合算して許容損失と比べる。

来週の予定を見ると、みんかぶが10月17日7時50分に配信した来週の主な予定では、10月23日(金)に日本消費者物価指数(9月)が予定されている。日本の物価統計は、日銀の利上げ観測を通じて円そのものを動かしやすい材料だ。結果が強く出て円買いが進めば、ドル円買いとユーロ円買いを両方持っている人は、2本同時に評価損を抱える。反対に利上げ観測がさらに遠のいて円売りが進めば、2本とも利益側へ動く。どちらに転んでも振れ幅が大きくなるのは同じで、円に偏ったポジションで私がいちばん警戒しているのはここだ。

先週のように相関が弱まる週があっても、通貨ごとの合計で数える習慣は崩さないつもりでいる。週末の点検で円の売りが1つの塊になっていると気づいたら、ロットを減らすか1本に絞る。通貨ペアの数が増えても、通貨の偏りが減っていなければ分散にはなっていない。